「・・・澪・・・いや、シカマル。―――別れてくれ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 やはり距離を置いたほうが安全だろうから。 任務前、さりげなくそう伝えれば。 彼は驚いたようにこっちを見、そして―――・・・ 「・・・―――わかった」 ナルトの最初で最後の恋は、あっけなく終わりを告げる。 別れのキスは苦く、そして甘かった。 + + + + 「―――どういうことですか・・・火影様!!」 「ブッ・・・なんじゃ、いきなり・・・騒々しいのぉシカマル」 執務が一段落し、のんびりと緑茶を味わっていたのどかなお昼時。 気配も無く窓から入りこみ、怒鳴り込まれたおかげでせっかくの茶を吹いてしまう。 最近ますます彼の気配絶ちには磨きがかかってきたようだ。 三代目はそのことに抗議しようと―――・・・ 「ナルトが俺に別れてくれと言ってきました」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「・・・―――はて、ワシも歳でな・・・」 「ンなこたぁわかってます。ナルトにフられました」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ―――嘘、だと。 嘘だと思った。 またいつものタチの悪い冗談だと思った。 だがシカマルの焦りの顔を一目見て、三代目も表情を引き締める。 「・・・・・・それで?」 「ただフられただけなら問題ありません。俺だって潔く諦めます。 ですが―――・・・あの時のナルトは何かがおかしかった。 冷静で、「―――く・・・ぅっ!!!」 遠慮なく腕に太い注射針を埋め込まれ、ナルトはくぐもった悲鳴をあげた。 大した痛みは無いが、全身がひやりとする感覚が兎に角気持ち悪い。 ―――ここはリオウの自宅の地下にあるラボ。 寝台に拘束された手足はすでに擦り切れボロボロだった。 「ふむ・・・やはりこやつの耐性は並ではないようじゃの。・・・もっと強い薬を」 「り、リオウ様!?これ以上は死んでしまいますよ!!」 「フン、こやつが死んでも文句を言ってくるのは極々少数の人間じゃて。 ・・・・・・まぁ、中には・・・すこぶる厄介な三代目火影様も含まれるがの。 それに心配ない、こやつは人間ではない・・・人間の致死量では死なん」 すぐ横で交わされるひたすらに不毛な会話。 こんな実験ごときで死んでやるつもりなどカケラも無かった。 「し、しかし・・・!」 「早くせんか、キョウ!!・・・主は狐に味方するというのか・・・・・・?」 「―――い・・・、いえ」 それにしても、この『キョウ』という人物は先程からやけに自分を庇ってくれる。 一体何を考えているのか―――おかしな奴が居たものだ、とぼんやり思う。 躊躇われつつもまた埋め込まれる太い注射針。 それは腕の中で必要以上に己を誇示し、血管内に緑の液を噴射した。 一瞬にして体中に広がっていき、今度は体内の九尾が反応する。 恐らくは特殊なチャクラが練りこまれているのだろう―――体が悲鳴をあげる。 「ぅ・・・ぁ・・・ぐぁぁあああああっ!!!」 堪えきれずに漏れる悲鳴。 拘束されることよりも、何よりもこれは屈辱的なことだった。 だがリオウはあざ笑うかのように、更に強い薬をと指示を出す。 「・・・辛いか、蓮。―――まぁ、せいぜい澪の為に頑張るんだな」 ・・・・・・・・・言われずとも。 この程度の苦痛、シカマルを守るためなら耐えられる。 彼を失う苦痛に比べれば大した問題にはならないのだから。