+ + + + 「ナルト・・・てめぇいい度胸じゃねぇか・・・・・・」 「!! し、シカマル・・・さん?どうしたの後ろに不動明王なんか背負って」 「ふざけんな!!しばらく絶対安静だって言われたろ!?」 こっそりと、火影邸に戻れば般若のごとく形相をしたシカマルのお出迎え。 見れば後ろにはハァ〜ッと拳に息を吹きかける三代目の姿も。 思わず一歩引いてしまうが、それはシカマルによって引き止められる。 「は、はは・・・悪い悪い、体動かしてないと落ち着かなくてさ―――」 「言い訳はいい!!どれだけ心配したと思ってんだよ!?一体ドコ行ってた!!」 「いや・・・別にその辺をふらふらと・・・・・・」 ―――言えない。 リオウの人体実験に付き合ってました、などとは絶対に。 それにしても、毎度のことながらキレたシカマルの迫力は凄まじい。 さっさとこの状況から逃れるため、ナルトは出来るだけ軽く言い訳する。 せめて三代目のすこぶる痛い拳骨だけは避けなければ。 「その辺ってどの辺だよ!?俺は逃げたらわかるよう結界張ってたんだ!」 「うぇっ・・・シカマルちょっとそれタチ悪いぜー?ストーカーじゃ―――・・・」 パシッ―――・・・! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「・・・・・・・・・は?」 今、何が起こったのだろうか。 ・・・・・・などとありきたりのことは考えず、ビンタを喰らったと瞬時に理解する。 だが今までにただの一度もシカマルに叩かれることなど無かったし、 無茶な実験のせいでかなり反射神経と動体視力が鈍っていたのだ。 「お前・・・こんなんも避けられねぇほど弱ってんじゃねぇかよ・・・・・・!」 「・・・―――ナルト。シカマルの気持ちも考えてやりなさい」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ―――シカマルの、気持ち。 考える余裕など無かった。 と 言うより、無理矢理考えないようにしていた。 とにかく、彼をリオウから守りたかったから。 どれだけ非難されようとも、彼を巻き込みたくはなかったから。 「ナルト・・・俺はそんなに頼りないのかよ・・・・・・」 哀しげにうめくシカマル。 そんな彼に、ナルトはただ呆然とした。 (頼りないとか・・・そんな問題じゃねぇんだよ・・・・・・) 自分は何の為に、大切なこの二人に嘘をついているのだろう。 自分は何の為に、大切なこの二人の気持ちを無視しているのだろう。 コトの全ては己が悪い。 そんなことはわかりきっている。 胸が痛むくらいにわかっているのに。 ―――そんな、シカマルが己を責める言葉など聞きたくなかった。 彼には普段通りで居て欲しかった。 彼には余裕たっぷりで居て欲しかった。 その為に彼の気持ちを無視し、独りで全てを背負った。 悪いのは自分だ。 悪いのは自分だけだ。 ここでシカマルが己を責めたら全てが無駄になる。 ―――どうすれば、いい。 どうすれば、彼をこんな腑抜けから元の彼に戻すことが出来る。 自分が黙っているだけでは、ダメなのか・・・・・・? そしてまた、流れる涙。 「俺は―――・・・九尾を封印するために、「蓮・・・三代目火影と澪に・・・・・・何を言った・・・・・・・・・?」 「・・・・・・――――――別に何も」 かろうじで。 動揺を表に出すことだけは避けられた。 だがこのリオウがこんな答えで納得するはずもなく、 老人にしては速い拳を鳩尾にお見舞いされる。 ―――ごほりと咳き込めば、掌に血の花が咲いた。 「・・・・・・とぼけるな!! 全て、全て見ていた――― お前の病室にはカメラを仕掛けておいたのじゃ。 もう少しでワシは火影を殺すという大罪を―――」 「黙れ・・・・・・お前とて火影に手を出せば只では済むまい」 「ッ!!・・・ふ、フン!今回は見逃してやろう。次は無いぞ!」 スタスタと、お馴染みの足取りでラボから出て行くリオウ。 ―――こんなにも・・・こんなにも簡単に。 たったこれだけの殺気を含ませるだけで、追い払えるのに。 自分は、あの最低な人間の言いなりになることしか出来ない。 「ックク・・・俺は莫迦だ・・・・・・」 莫迦だ。 果てしなく莫迦だ。 殺すに値する人間を殺さない。 こんなことは今まで無かった。 そして、こんなにも誰かを殺したいと思ったことも。 「クッ・・・はは、はははは・・・・・・」 独り、狂ったように笑い続けるナルト。 そこへ一人の黒髪の男がやってきた。 「―――蓮。これを飲んでください・・・体力が回復しますから」 「・・・・・・・・・は?・・・何アンタ・・・・・・『キョウ』?」 「はい。よく覚えてますね・・・・・・私は緋月キョウです」 胡乱気に男を見つめ、そして手の中の物を見つめた。 それは、とても温かそうで・・・美味しそうなココア。 匂いからして妙な物は入ってなさそうだ。 ―――だが、何故。 何故自分などにこんな物を持ってきてくれるのか。 この上なく、怪しい。 「・・・怪しまないで下さい。君なら毒入りでも大抵の薬は平気でしょう」 「いや・・・・・・まぁそうだけどさ。アンタ馬鹿?俺にこんな―――」 「君は英雄ですから」 「・・・・・・は?」 そう、信じられないことをポツリと呟いた男の顔は。 無表情だが―――どこか哀しげで切なげだった。 今まで『化け物』とは散々言われてきたが、 他人に『英雄』だと言われたことはなかったのだ。 ―――しかも、男の表情は本気そのもの。 「・・・アンタやっぱ馬鹿だろ・・・リオウの部下のくせして」 「私があの方に従うのは呪いをかけられたせいです」 「・・・・・・・・・・・・・・・ふーん。呪い、ね」 あの男ならやりかねないことだ。 だが・・・それでもやはり。 「―――俺は九尾だぞ?」 「いえ、君は英雄です」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 即答。 何故だろう。 「理解できない・・・って顔してますね。だけど君は英雄です。 私はあの時―――四代目が君の中に九尾を封印した時。 あの場にいて、リオウと共にことの全てを見ていました」 「・・・・・・リオウ?呼び捨て?」 「あんな奴、呪いが無ければ殺してます」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 一瞬、穏やかだったキョウの瞳がギラリと光る。 「三代目に聞いたでしょう。四代目は君に英雄になってもらいたかった。 里人に君を英雄として称えて欲しかった。・・・けれど認めなかった」 細く、細くなるキョウの双眸。 昔を思い出しているというよりも、 現在を憎んでいるかのようだ。 「里人は愚かだ。そして私も―――この状況を甘受している君も。 呪いさえなければ、君の成し遂げた偉業を伝えたかった・・・・・・ 四代目の想いと共に、愚かな里人たちに伝えたかった・・・・・・ 君を利用しようとした、リオウのせいで出来なかったけれど」 淡々と、淡々と。 ひらすら事実を述べる彼はひたすら無表情。 ナルトはキョウにかけられた“呪い”をチャクラで感じてみる。 「―――アンタは。アンタは俺が憎くないのか」 「全く。君の中に居る九尾は憎くて仕方がありませんが」 「・・・・・・すまん。その呪いは俺でも解けそうにない」 「わかっています。結構ですよ」 ゆっくりと。目を瞑る。 ―――もう少し正気を保てそうだ。 + + + + キョウはラボからでると、深く深く嘆息する。 自分が今でも敬愛して止まない人。 彼の遺児を、こうして苦しめてしまうのは。 「結局・・・私に勇気がなかったからだ・・・・・・」 敵対する自分の言葉を信じてくれた。 この愚かな里を守ってきてくれた。 何より優しい心を失わずにいてくれた。 彼。 「・・・・・・・・・四代目・・・今度は私が守ります」 そして決意する。 ―――呪いなど、クソ喰らえ。 (リオウ・・・・・・待っていろよ・・・・・・・・・)
------------------------------------------------------------ シア様、リクエストありがとうございました^^ 始め『キョウ』の役を誰にしようか、と迷ってました。 でも原作キャラだとちょっといろいろキツイかなぁ・・・と。 で、無難に適当なオリキャラを。 よく頑張りましたキョウさん。頑張れ中間管理職。 設定は本当に素晴らしいものを頂いたんですが・・・(汗 ------------------------------------------------------------