「・・・・・・!!?」
何が。
起こったのだろう。
自分が下忍ごときに殴られる?
いや、そんなことより―――
(ナルトの・・・このチャクラはっ・・・・・・!!!)
間違いない。
「・・・九尾!!!!」
どうやら、自分はとんでもないことをしてしまったらしい。
額の汗をぬぐいつつ、カカシは叫ぶ。
「アスマ、紅! シカマル以外の皆を避難させろ!!!」
シカマルを残すのは、どういうわけか自分より上の実力を持っているようだから。
混乱の最中、それだけはかろうじで理解することができた。
アスマと紅にもわかったのだろう、カカシの言葉に異議は唱えない。
「お、おう!」
「カカシ、シカマル!あなた達は―――・・・」
「いいから行け!!」
戸惑い、下忍を導く二人。
皆混乱して叫んだり固まったりしているが、構っていられない。
「・・・・・・くそっ!」
俺は、莫迦だ。
+ + + +
「・・・たく・・・どう責任とってくれんだ・・・?」
美しき最強の獣。
これ以外に例えようがない。
「―――命、張るよ。応援がくるまで」
「ったりまえだ!!お前がクスリを捨てたりするから!」
「そもそも何なのさ、アレ!?」
「・・・・・・生き残れたら教えてやる」
今は、集中しなければ。
(絶対止めてやるから・・・お前も諦めんなよナルト!)
+ + + +
殺せ!殺せ!殺せ!コロせ!コロせ!コロせ!コロセ!コロセ!コロセ!!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だイヤだイヤだイヤだイヤだイヤダイヤダイヤダイヤダ・・・・・・
ドクン。
ドクン。
ドクン。
ズキン。
ズキン。
ズキン。
《俺に身を委ねろ! 一つになれ!!》
(イヤだ・・・! ヤメロ!!)
ドクン。
《この里はお前を受け入れない・・・! 全て捨ててしまえ!!》
(そんなことわかってる・・・!!)
ズキン。
《ならば壊せ!! 今までの恨みを晴らすがいい!!!》
(煩い・・・! 俺は・・・俺はッ・・・・・・!!)
俺は――――――・・・・・・!!!!
+ + + +
「なんつープレッシャーだよ・・・!」
足元まで伸びた金糸。
細くなった瞳孔に飾られた視線。
おまけに禍々しいチャクラの迸りで服は全て消し飛んでいる。
真っ赤な口から白いキバをのぞかせて、ペロリと唇を舐める様がゾッとするほど美しい。
―――その視線だけで、動けなくなりそうだった。
(このままじゃ・・・気圧される・・・!!)
シカマルは無理矢理余裕の笑みを浮かべ、目の前の獣に話し掛ける。
今の彼を動かしているのは、ナルトに生きることを強要してしまった責任と。
―――ナルト自身への。想いのみ。
「・・・はじめまして、だな。九尾さんよぉ」
それでもこう言うのが精一杯。
獣はカカシに移っていた視線を再びシカマルに戻すと、
形容しきれないほど美しい声で語りかけてきた。
「お前が奈良シカマルか・・・こやつの腹の中でいつも見ておったぞ」
「へぇ・・・光栄だな」
「くくッ・・・俺がこの世で最も嫌いなモノ、それがお前だ」
「・・・・・・・・・・・・」
美しいが、狂気を孕んだ笑み。
顔も体もナルトの物、違うのは髪の長さと双眸だけなのに―――
何故、こうも違って見えるのだろうか。
(・・・やっべぇ・・・マジ死にそう)
凍りつきそうだった。
とにかく逃げ出したかった。
だが、そういうわけにはいかないのだ。
「それにしても・・・奈良の子よ。お前の苦悩する様は中々見物だったぞ?
余程こやつが大事らしいな・・・・・・その点で、俺はお前を気に入っている」
「・・・・・・ンだと?」
なんだか話が変な方向へ向かっているようだ。
九尾が解放されたら暴れ出すものだとばかり思っていたが・・・・・・
いや、そんなことよりも。
「―――おいカカシ。お前は行け」
「・・・はぁ?何言ってんの?」
カカシには、九尾との会話を聞かれたくない。
「お前が対抗できる相手じゃないだろ・・・俺でもそうだが。
―――それでも、俺はお前よりは強いからな・・・・・・
火影様の所へ行って、応援は俺が死んでからにしろと伝えてくれ」
「冗談言うんじゃぁないよ。俺が先生の仇を前に逃げ出すとでも?」
「逃げるんじゃない。伝えに行くんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
睨み合い。
だがそれも一瞬のことで、カカシは溜息をついた後姿を消した。
―――これで、九尾と二人きりで話が出来る。
「・・・待たせたな、九尾。さっきの言葉はどういう意味だ?」
一挙一動に細心の注意を払い、問う。
だが対する九尾の答えは―――あまりにも、意外なものであった。
「――――――俺は、こやつが愛しくてならんのだ」
「・・・・・・は?」
シカマルの高性能な頭脳でも、理解するのに時間がかかってしまった。
それにひきかえ九尾は本当に愛しそうに、ナルトの腕でナルトの体を抱き締める。
「はじめは、ただ憎んでいたのだがな」
「・・・お前もコイツの天然色香にやられた口か?」
「くく・・・そうらしい」
そう言って笑った顔は、先程と違い穏やかだった。
大妖怪でもこのような笑い方をするのかと、少し警戒を緩めてしまう。
だがそれもお互い一瞬の間だけ。
九尾は再び蔑むような表情になり、シカマルも臨戦態勢に入る。
「・・・だから、俺はこの里の人間が憎くてたまらん。お前も例外ではない」
「・・・・・・・・・俺もだ」
フッと笑う。
そして大きく大きく、深呼吸。
さぁて―――・・・
俺は生き残れるだろうか?
お前を止めるためならこの命。惜しくはない。
木の葉で、12年前の悪夢が蘇ろうとしていた。
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その時俺は確かに喜びを感じていた。
絶望的な状況で歓喜していた。
いい死に方が出来そうだ。
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