彼には打算も馴れ合いも無かった。




欲しければ理解しろ




ネジに紹介されたのは、さして大きくも小さくもない建設会社だった。
その社長宅兼事務所に住み込みで働かせてもらうことになったのだ。
今まで労働などろくにしたことのないナルトだったが、
愛想を振りまくのが壊滅的に不得手な彼からすれば接客業でないのはありがたい。
しかも衣食住つき。願ったり叶ったりである。

「…っつーわけで、今日からお世話になります」
「……あ、あぁよろしく」
「ま…まぁよろしくジャン」
「…………」

その家には三兄弟がいた。
テマリ・カンクロウ・我愛羅と名乗る彼らにナルトはさして興味は無かったが、そこはそれ。
件の「友達百人」とやらを達成するために彼は必死である。
引き攣りそうな表情筋を精一杯酷使して極上の笑みを貼り付ける。

(まあつかみはオッケーだろ…)

正直自分の行為の馬鹿さ加減に嫌気がさすがしかたがない。
我愛羅の反応が無かったことに若干プライドがくすぐられたが
(なんたってナルトは自分の魅力というものを熟知している)、
年上の二人が頬を染めて(カンクロウは若干、いや、けっこーキツイ、)いる様子に満足する。

(ここに居ても出会いはなさそうだしな…金貯めてさっさと出てこ)

なにやら随分とすれたことを考えてはいるが、ともあれナルトの人生初の労働の始まりである。


+  +  +  +


美しい少年だった。
あまり見かけない眩いほどの金髪と天空を映した青い瞳は天然モノらしい。
自分とは違う血色の良い頬、成長途中のスラリとした体躯、均整の取れた顔立ち。
「格好良い」という形容よりは「美しい」という言葉が似合うが、女々しさは感じ取れない。
凡そスクリーンの向こう側の人間と言ってもなんら遜色のない少年が、
家のような極普通の建設会社に居るのは少し不似合いな気もする。
我愛羅は無意識のうちにそこまで分析して、思考を止めた。

(―――何を考えているんだ)

蕩ける様な笑顔に姉と兄が蕩けきっているのを横目に我愛羅は冷静だった。
その利発さが窺い知れるテンポのよい話術や、愛想の良さに時折混じる酷薄な表情。
必死に彼に話しかけようとしている二人に向けられている熱のない視線。

(ああ、まただ)

ちらりと一瞥。これで二度目だ。
彼の視線が自分に向けられ、そしてその目は己に問うている。

―――お前は俺に興味がないのか?

(……こいつは、)

人心を掌握する術を全て心得た目だった。
己の容姿を、魅力を、声の響き方を全て熟知した上で人をかどわかす。
その裏にあるのは過去の経験に裏打ちされた絶対の自信だ。
恐らく今までは失敗したことがないのであろう、己に向けられる視線には好奇が混じっていた。

(ここで反応しては、だめだ)

そうすれば彼の瞳からはまた熱が抜けるであろう。
最近和解した姉から常日頃言われている「友達を作れ!」の教訓に従うわけではないが、
感情の起伏が激しいとはいえない我愛羅にしては珍しくこの少年に興味を持った。

(何が一番効果的だろうか)

彼に何があったのかは知らない。
父である社長が知り合いに紹介されたといっていきなり連れてきただけなのだ。
その素性も、このような酷薄な笑みを形成し得る過去の経験など知る由もない。
だからこそ試してみるものおもしろいかもしれない。


「、―――!」


そうして我愛羅が薄く微笑んで見せたときの、
まさに狐につままれたような彼の表情は至極愉快であった。





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短い!
それにしても久々の更新…受験なのに何やってるんだ私…
いや、でも、割と順調です!←
ていうか書き方が随分変わっててびびる。
中学時代に書いたやつをさっさと消してしまいたい…!
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