「あ゛〜〜〜〜〜〜・・・・・・ド畜生!!」
狐乃覇のNo.1ホスト・鳴人ことうずまきナルトは、その美しい金髪を振り乱しつつ、
現在完了進行形で(わかりづらッΣ( ̄ロ ̄lll))高熱に苦しんでいた。
始めは寒気。
そして頭痛・喉の痛み・咳ときて。
「クソッ・・・ンで・・・39.4度もあんだ・・・よ・・・・・・!!」
・・・と、いう有様だ。
ヤケクソに目覚し時計を投げつけても、その美しい腕に力は無い。
傍から見れば、
熱に浮かされ焦点のあわぬ瞳は涙に濡れ、
荒い息をつく様はまるで淫靡な絵画のよう・・・
・・・なのだが、本人にしてみればそんなつもりは全く無い。
よって、側の人間が悶えている理由など、皆目見当もつかないのである。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ」
―――ダンダンダンッ!!
生活感無しのナルトのマンションの壁に激しく額を打ち付ける音。
機械的に動くその首の破壊力は凄まじい。あ。壁凹んだ。
この、急に呼び出されて強制的に(でも嬉しい)看病させられている人物とは。
「―――にやってんだよ・・・シカッ・・・!!早く薬持って来い・・・!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ド畜生・・・・・・!」
狐乃覇のNo.3紫華丸こと、奈良シカマルであった。
普段自宅には滅多に客を招かないナルトが、唯一自分から誘う人物だ。
理由は至極簡単。―――二人が昔からの腐れ縁だから。
「クソッ・・・・・・耐えるんだ俺ッ・・・・・・・・・!!!!」
「・・・やくシろ・・・・・・!!」
幼稚園も小学校も、中学校も高校も。
全て一緒で、信じ難いことに全て同じクラスだった。
無論、これは偶然などではない。
シカマルのことを一方的に気に入っているナルトが―――
これがシカマルの人生にとっては幸せなのか否かは不明だが―――、
親に頼み込んで無理矢理同じクラスにしたのだ。
「こンの天然フェロモンマスターめっ・・・!!」
「あ〜・・・?なんか言ったか?」
「言ってねぇっ!!」
しかし『親に頼み込む』くらいで、同じクラスにしてもらうことなど普通出来ない。
その“親”というものが特別な―――それも超がつく程の人物でなければ。
・・・まぁ、ナルトの“親”については今は触れないでおこう。
「っそぉ・・・あと1時間で・・・ヒナタさんとデートだっつーのに・・・・・・!!」
「あ゛!? 何言ってんだナルト・・・まさか行く気じゃねぇだろうな?」
「ぁあ?そっちこそ何言ってんだ・・・行かないワケねぇだろ」
「・・・・・・ナルト!!」
そう、行かないわけがない。
『ヒナタさん』とは上客中の上客――日向流古武術という武術を伝える、
日本でも五指に入ると言われるほどの旧家の時期当主だ。
家柄にも容姿にも恵まれ、しかも謙虚な彼女はモテる。
少々内気すぎる感はあるが、縁談も後を絶たないらしい。
・・・・・・が、いっこうに結婚する気配が無かった。
それというのも、彼女がナルトをいたく気に入っているからだ。
「ンだよ・・・・・・もしかして・・・止める気か、シカマル?
先月・・・2、本も、ロマネいれてくれた・・・客との約束を・・・?」
「馬鹿、そんな体でどうするつもりだ!!大体感染でもしたら・・・!」
「ハ、そん・・・なヘマ、俺がすると思うか?
この俺にかかれば・・・マスクも立派な小道具だって」
「そいういう問題じゃ・・・!!」
当然、止めようとするシカマル。
だが誰が何と言おうと行かないわけにはいかない。
因みに、ロマネとはロマネ・コンティという一本百万を超える酒のことだ。
「あ〜もーうっせぇ!俺は行くぞ、絶対行く!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ったく・・・・・・・・・」
例え天変地異がおころうとも、客との約束は絶対に守る。
―――是、一流ホストの鉄則である。
欲しければ捨てちまえ
「鳴人さん・・・遅いな・・・」
と、日向ヒナタは人知れず呟いた。
名家の令嬢たる彼女ははしたなく貧乏ゆすりなどしないが、
不安と退屈を持て余していることは見て取れる。
既に何人もの男に声をかけられたが、全て丁重にお断りした。
約束の時間から、約30分が経過している。
間違っても時間にルーズとは言えない鳴人にあるまじき事態だ。
(でも―――鳴人さんがドタキャンなんてするわけないし)
あの容姿も頭脳も動作も洗練されきった彼が、そのようなことを。
客のためなら例え虎芥子とやらに誘拐されても来るはずだ。
そう―――“客”のためなら。
(・・・・・・婚約・・・ううん、結婚くらい、さっさとしてしまえばいいのにね)
ヒナタの年齢は現在21。
まだまだ結婚を急ぐような年齢ではないが、彼女は旧家の令嬢である。
一般的な結婚の常識とは多少なりとも違っているのだ。
(でも・・・私は・・・・・・)
出会ってしまったのだ。
今まで散々両親に慣れない反抗をし、それに疲れて腹を括った矢先。
友人に誘われ、乗り気でないまま訪れたホストクラブで。
出会ってしまった。
(―――鳴人さん・・・私は)
わかっている。
ホストに恋する辛さも苦さも切なさも。
+ + + +
「ぢぐじょ〜〜〜・・・何で俺がこんな目に・・・・・・」
ズルズルズル。
必死で鼻をかんでも、大した効果は得られない。
ゴクゴクゴク。
風邪の薬を飲んでも、大した効果は得られない。
獅之美のNo.1、虎芥子ことはたけカカシ。
鳴人に負けぬほど生活感の無いマンションで。
ここにもまた、現在完了進行形で高熱に苦しむ男がいた。
ちなみに―――・・・看病をする者はいない。
(フンッ、どうせアイツらなんか呼んでやんないし―――)
いや、つい先程まで家に来るよう電話をしまくっていたのだが。
いつものメンバーが忙しかったせいなのか、カカシの人望の無さの象徴か。
誰一人として見舞いにくることもなく(それどころか風邪でも働けと言われるしまつで)、
たった一人で原因不明の高熱との死闘を繰り広げているのである。
(くっそ・・・なんなんだよ、昨日までは別にフツーだったのに!!
てゆーか何なのアイツらのこの冷たさは!?絶対零度-196度じゃん!!)
そんなに見舞いがほしければ、女に来てもらえと言いたいが。
彼は男の友人ならともかく、自宅に女を呼ぶようなことはしない。
一度呼んでしまうと『自分は特別だ』と勘違いされることがあるからだ。
(・・・でも・・・こんなとこで寝てるわけにはいかないな・・・・・・
俺は・・・毎日意地でも鳴人を勧誘するって決めたんだ・・・・・・!!)
それは、彼を誘拐して例の
アルゼンチンバックブリーカードロップストマックブロック式
・・・をキめられた瞬間決めたこと。(嫌なタイミングで決めるなよ)
気合と気力でもって、カカシは重い体をベッドから引き剥がす。
(・・・初めてなんだ・・・コレだけ何かに惹かれたのは・・・・・・!!)
初めてのこと。即ち初体験。
ナントカの初体験は中学生時代にオサラバしているが、
このような感情は全く知らなかったのだ―――鳴人に出会うまで。
『このような感情』。即ち、恋。
(―――鳴人・・・俺は)
わかっている。
男に恋する楽さも馬鹿さも不毛さも。
+ + + +
「―――鳴人さん! ど、どうなさったんですか、そのマスク・・・」
「ごめんねヒナタさん・・・40分も遅刻しちゃって―――ゴホッ、ゲホッ!」
「な、鳴人さんっ!!」
くぐもった声で名前を呼ばれたと思えば。
振り向くと、ハイセンスな私服に身を包んだ鳴人の姿があった。
だが鮮やかな金髪は心なしか艶が少なく、その美声も・・・完全に鼻声だ。
極めつけに、木の葉の空を映した双眸は宝石のごとく潤んでいる。
これは女であろうと男であろうと即刻ノックアウト―――・・・ではなくて。
「な、鳴人さん、もしかして風邪を・・・・・・!」
「ああ大丈夫だからヒナタさん。早速昨日言ってた店に―――」
「鳴人さんっ!!」
「ッッ・・・・・・・・・はい」
らしくもなく、それも鳴人相手に声を荒げるヒナタ。
だが当然と言えば当然だ。
―――鳴人は、どこからどう見たって病気なのだから。
「何でっ―――!何で、こんなお体で外へ出てきたりしたんですっ!!
私のことなんか放っといて、お休みになっていればいいのに・・・!!」
知らず、涙が滲んだ。
隠してはいるが、焦点の定まらない瞳。
隠してはいるが、いつもより荒い吐息。
隠してはいるが、おぼつかない足つき。
この状態から察するに、かなりの高熱なのだろう。
それをおして、自分とのデートに来てくれた優しさと誠意は嬉しい。
―――嬉しすぎるのだ。
期待をしそうになる。
夢を見そうになる。
だから、必要以上の優しさなんていらないのに。
必要以上に優しくされたら―――・・・
「勘違い、しそうになります―――・・・っ」
「・・・・・・・・・ヒナタさん」
勘違いしそうになる。
だから。お願いだから。
お願いだから。
+ + + +
タクシーを呼ばれ、乗せられ、呼び出したのは自分だからと代金を渡され。
熱で体の自由がきかないこともあり、彼女の何時にない強引さもあり。
されるがままになっていたら、いつの間にか自宅についていた。
「・・・―――まぁ、相手が日向嬢じゃぁな。当然返されるか」
「・・・・・・・・・・・・・・・ククッ・・・女ってこえーよな」
「まったくだ」
ずるずると、靴も脱ぐことも出来ず、壁に寄りかかったまま体が落ちてゆく。
苦笑し、溜息をついたシカマルが肩を貸してくれた。
「ったく、こうなることはわかってたんだろ?
悲しませるのが嫌なら最初から日を延ばせばよかったんだよ」
「・・・・・・そういうわけには・・・いかねぇよ。俺は」
「わかってる。“約束”なんだろ?―――あの人との」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
約束。
衝動的に家を出た、17の夏に交わした約束。
探さないことを条件に、交わすことを条件とされた約束。
「ああ―――・・・俺は・・・絶対に約束を破ったりしない」
約束。
『約束を破らない』という、契約にも似た約束。
「・・・・・・悪いなシカ・・・俺・・・ちょっと寝るわ・・・」
「ああ。後のことはやっといてやるよ」
「―――ンキュ・・・」
思考にかかる靄が濃くなってゆく。
よぎるのは、彼女の顔。
内気で物静かな彼女の怒声。
優しく落ち着いた―――彼女の泣き顔。
あんな風に、取り乱すような人だとは思わなかった。
『―――やっぱお前、ホストには向かねぇよ』
呟く幼馴染の言葉を理解する余裕など、何処にも無かった。
+ + + +
『―――やっぱお前、ホストには向かねぇよ』
呟く。
思う。
向かない。
彼はホストという職業には向かない。
優しさを売る、この職業には向かない。
ホストクラブは良いところだと思う。
人の傷を癒すことができるし、深入りしなければとても楽しい。
深入り、しなければ。
(・・・どれだけ割り切っても・・・・・・お前みたいな奴には辛すぎる場所なんだよ)
人を惹きつける・・・いや、“惹きつけ過ぎる”彼には辛すぎる。
本気の人間が増えれば増えるほど、収入も増えるが重荷も増える。
「―――うん。向いてねぇよ」
いつか、この呟きが彼に届くことを祈ろう。
+ + + +
「な・・・鳴人ぉぉぉぉおおおお・・・・・・!!!」
ここ、狐乃覇の裏口で。
なんとも哀れだが恐ろしい、眼帯高熱男の声が響いた。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
それをやや引き気味に見つめる面々もあり・・・・・・
虎芥子に面して左側から、シノ、キバ、サスケである。
『おい・・・どうするんだよコレ・・・』
『・・・さっさとつまみだせばいいんじゃないか?』
『―――激しく同意する』
ひそひそと、必要も無いのに声をひそめる三人。
通常通りに開店の準備をしていたら、突然この男がやってきたのである。
曰く、「鳴人に会わせろ」。
―――が、先日のこともあるので会わせるわけがない。
しかも虎芥子の目的は、明らかに鳴人の勧誘だ。
彼が獅之美に行くことは万が一にもないだろうが、億が一ならあるかもしれない。
よって、速攻でお引取り願うことに決定したの―――だが。
『今・・・冬だな』
『おう・・・放り出したら凍死するんじゃねーの!?』
『―――構わないんじゃないか?』
『『・・・・・・・・・・・・・・・』』
シノのさりげない一言。
気分的には同意したくてたまらないが。
「なる・・・ぅごほっ、ごへっ、げほほほほほっ!!!」
『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』
―――と、いう状態である。
最初は気を引くための演技とも思ったのだが、どうやら本気で熱があるらしい。
この状態で彼を放り出せば、凍死するは必至であろう。非常に後味が悪い。
『・・・今の鳴人の状態を知らせれば、どうなると思う』
『どうなるってサスケ・・・そりゃぁお前』
『排水溝を這いずり回ってでも自宅を探し出し、よからぬ行動に出るだろうな』
『『・・・・・・・・・・・・・・・だな』』
『『『ハァ・・・・・・』』』
彼らの終わらぬ話し合いは、シカマルが現れる30分後まで続くこととなる。
+ + + +
「ふはははははは!!!!」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
朱槻の地下倉庫。
その隅っこ。
キノコ生えそう。
カビは生えている。
「ふはははははは!!!!」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
響く哄笑。
藁人形に釘を打ち付ける音。
踊り狂う赤目(カラコン)の男。
遠巻きに遠い目で見守る同僚達。
「ふはははははは!!!!」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」
そろそろ、朱槻創設以来初の(精神)病院送りが出そうであった。
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何なんだこのメロドラマ的展開!!Σ( ̄ロ ̄lll)
ていうか何でナルヒナになってるの?ねぇなんで??
ヒナタを含め、同期の下忍衆は皆二十歳前後です。
そして彼女もカカシもかなり本気なんです。
鳴人は罪作りな王子サマ・・・いや、キングか。
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