「ナル君!君の婚約者が決まったよ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぶっ。」


それは、17の夏。

突然の、出来事。





欲しければ掴み取れ






思えば、俺の父親はいつだってそうだった。
自己中心的で、考えなしで、地球は自分と息子を・・・・・・
否、自分と『自分の息子』を中心に回っていると思ってやがる。

40歳間近で天真爛漫・・・と言えば聞こえはいいが、
単に思考がめちゃくちゃ子供じみているだけだ。

しかしそうやって油断していると必ず痛い目にあっちまう。
ああ見えて頭脳明晰な奴は、いつだって俺を『父親らしく』見守っているのだから。
無垢な笑顔の下に腹黒さを隠し、邪気を隠し。


いつだって俺を・・・いつだって俺の手の届かない場所で。






+  +  +  +






「ざけんじゃねぇぞクソ親父!!!」

「こらナル君もっと綺麗な言葉を遣わないと」
「ごまかすな!」


大都市木の葉の閑静な高級住宅街。
その中央の最も高価な土地を遠慮なく陣取った豪邸。
その中の異常な広さを誇る一室で、相似の色彩を持つ二人が言い争っていた。

・・・いや、正確には若干背の低い方・・・どうやら息子が、
自らの父親に一方的(?)に詰め寄っているようだ。


「・・・・・・アハ☆」
「きもい!!」
「・・・・・・ヒドイよナル君・・・」


と言いつつ、全く気にしていない様子の父親。
端整な顔立ちには似つかわしくない、ニヤニヤとした笑みを貼り付けている。
対する息子は怒り心頭といった様子で(当然だ)、今にも噛み付きそうだ。


「こンの破天荒楽観的利己主義者が・・・!!!
 いいか!?婚約者が決まった、そこまではまぁ許す!!!」

「え、許してくれる・・・「黙れ」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「―――だがな・・・この相手は一体どういうことだ・・・??」


この相手。
ナル君と呼ばれる息子が、そう言って父に手渡された書類を示す。


「ど、どういうことってそりゃぁ・・・・・・大企業の息子さんで、名前は、はたけ・・・」


「どう!みても!!これは!!!!!」





















男じゃねぇかドチクショウ!!!!

























































+  +  +  +










はたけカカシ 23歳 男性
 ・株式会社スケアの御曹司
 ・間抜け面だが油断のならない性格
 ・眼帯はポリシー
 ・銀髪は染色と半白髪疑惑で揺れている
 ・どちらかと言えば醤油よりソース好き
 ・まぁまぁ男前だけどパパには負けるぞ☆
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ビリビリビリッ。 金髪碧眼の少年が、問答無用で最後の一行を破り取る。
はたけカカシ 23歳 男性
 ・株式会社スケアの御曹司
 ・間抜け面だが油断のならない性格
 ・眼帯はポリシー
 ・銀髪は染色と半白髪疑惑で揺れている
 ・どちらかと言えば醤油よりソース好き
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ここは少年―――うずまきナルトの部屋。 まだまだ気になる箇所、というかツッコミ所は満載だが、 とりあえず先程父に押し付けられた、“婚約者”とやらの書類に再び目を通す。 ベッドに寝転びつつ、不機嫌な美貌をますます歪めつつ。 父に殴りかかろうとしたところをSPにとめられ、怒りのぶつけ所を無くし。 若干17歳の少年には受け入れがたい要求―――『婚約』を突きつけられ。 しかたなしに、部屋に篭って怒りを静めようとしているのだ。 (ちなみにはたけカカシとやらの写真をダーツの的にしている) 『書類』とは要するに“はたけカカシ”についてのものなのだが、 こんなワケのわからんデータだけで彼の人のことなどわかるはずもない。 ―――いや、わからなくともよいのだ。 (・・・誰が哀しくて・・・お、と婚約しなきゃいけねーんだよ・・・!!) そう。相手は男。 いくらこの国を代表する大企業の御曹司で、しかも男前であろうとも、 相手は男。男。おとこ。オトコ。男は漢とも表せる。男。 (俺も正真正銘の男だっつーのに・・・・・・!!!!!) うずまきナルト、『影のこの国』を代表する組織の御曹司。 こちらも文句のつけようもなく男である。いくら別嬪さんであろうとも。 (くそぉ・・・!!親父のことだ、本気で法律変えかねねぇ・・・!) ナルトの父親はこの『組織』を統括する人物だ。 この国だけでなく様々な国・・・“世界”への多大な影響力を持ち、 彼ならば法律を変えてしまうということもありうる。 即ち―――・・・ (奴なら男同士の婚姻を可能にさせちまう!!!) ―――そう。 要するにゲイが認められてしまうのかもしれないのだ。 ナルトからすればそんなことはどうでもいいのだが、今回はちがう。 自分がかかわっているのだから。生憎ゲイになるつもりはない。 (大体はたけカカシはこの件についてどう思ってんだよ・・・・・・) 信じがたい話だが、父の話によれば、彼は快く承諾してくれたらしい。 『快く』という言葉の裏に、どんな壮絶なドラマが隠されているのかはわからないが、 きちんと本人のサインと捺印があるのだから間違いは無いのだろう。 (・・・つまり・・・あちらさんは立派なゲイってことだ・・・・・・) ではどうする? あちらが乗り気(?)である以上、婚約阻止は難しい。 ―――父に本気で逆らえたことなど一度もないのだから。 (悔しいが親父に本気で逆らったら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フッ。) ・・・・・・・・・想像するだけでも恐ろしいので止めておく。 一時期は、父を殺そうかと本気で思ったこともあったが。 (たとえ殺せたとしてもこのクソ面倒な組織を継ぐことになるしな・・・・・・) あまり気の乗る話ではない。 ―――ならば。 (はたけカカシを殺すか・・・・・・?) そうなればまた別の婚約者候補が現れるに違いないが、 ひょっとすれば女性の候補が上がるかもしれない。その方がマシだ。 半ば本気でこの解決策を検討する。 (・・・・・・・・・よし。決めた!) 決めた。 はたけカカシを殺す―――のではなく。(やはり殺人はマズい) (俺はこの家を出る!!!!) そうと決まれば、早速父の元へと向うのみ。 +  +  +  + 「―――親父。話がある」 「ん。なんだい?」 コンコン。 一応ノックをして入ってゆけば、広い和室の中央に静かに在る存在。 何かするでもなく、ただ床の間の掛け軸――母の形見らしい――を眺め。 いつになく落ち着いた父の様子に違和感と安堵を感じつつも、 ナルトはゆっくりと父の元へ・・・きちんと下座の方へ座った。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 流れる沈黙。 お互い何かするでもなく、ナルトは父を、父は掛け軸を見つめ。 身動きせぬ二つの金色の存在―――ただ美しい。 「―――出るんだね」 沈黙を破るは父。 理由もなく、昔からそうと決まっていた。 「ああ。宣言する」 『出るんだね』と。 そう確認するかのように呟く父の声は落ち着いている。 『ああ。宣言する』と。 そう噛み締めるかのように呟く己の声は落ち着いている。 “出る”ということ。 即ちナルトがうずまき家を“出る”ということ。 “うずまき”は、旧家だ。 この国のどの“旧家”よりも古い歴史を持つ家だ。 息子は父に逆らえず、父は祖父に逆らえない。 そして祖父は“当主”に逆らえない。 およそ“旧家”と呼ばれる家においては極当然のことであるが、 “うずまき”においてはある特例が存在している。 その特例を発動することが―――即ち、『宣言する』ということ。 「うずまき家四十八代目次期当主として宣言する―――  うずまきにおける一切の次期当主としての権限を破棄し、  うずまきにおける一切の次期当主としての義務を破棄し、  うずまきにおける一切の当主との契約・被命令権を破棄する。  この宣言は絶対のものであり、何人たりとも干渉は不可とする」 「御当主―――・・・承認を」 静かに、告げた。 うずまき家での特例、即ち子には家を“出る”ことが許されるのだ。 無論世継ぎがいなくなれば“家”が成り立たなくなるのだが、 うずまきの当主ともなれば愛人など星の数ほど存在する。 『愛人』というよりは『一夫多妻』と表現したほうが正しく、 妾腹の子であろうとも正室の子が無ければ継承権を持つ。 よって、当主の許しが出れば家を“出る”ことは可能なのだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・子供って本当に成長が早いよね。  でも―――ナル君わかってる?この家を出るには・・・」 「わかってる。当主と契約・・・いや、“約束”をするんだろう?  そしてそれを破った場合、『何か』を失うことになる―――・・・  『何か』が何なのかは知らねぇけど、俺は破るつもりはねぇよ」 「―――うん。ナル君は約束を破るような子じゃないもんね。  でも・・・もう一つあるんだよ?この家を出るための条件」 「・・・・・・・・・?」 もう一つの条件など、今初めて聞いたが。 いつになく真剣な父の様子に黙って耳を傾ける。 「まず、一つ目の条件の“約束”だけど。  絶対に―――『誰かと交わした約束を破らない』こと。  『約束を破らない』、これが僕との約束だよナル君」 「・・・・・・・・・・・・・・・ああ」 「それから、二つ目の条件っていうのはね―――・・・」 「ぃいよっっしゃぁぁあああああ!!!!!」 うずまき家の家の外。 7月の太陽がこれまでとは比べ物にならないほどに輝いて。 ガッツポーズをキメる少年は、多難であろう前途に希望をよせて。 (あとは・・・“二つ目の条件”をクリアすれば・・・・・・!!) 俺は、完全に自由になれる。 籠を飛び出した少年に、世の陰など知る由もなく。  


戻る


------------------------------------------------------------
スケア:scarecrowで「案山子」(カカシ)の意。
    scareのみでは「おどす」「おびえる」など。

※過去⇒現在に向かって文字色濃くなります。
------------------------------------------------------------