「―――まだ死ぬには早いぞ、ナルト」
聞こえたのは、紛れも無くあの人の声。
「なっ・・・! 何故お前がここに!?」
カカシの言葉など耳に入らなかった。
「ナルト・・・どうした?」
どうした、だと?そんなの―――・・・
「嬉しいからに決まってる・・・・・・!」
ありがとう。
完全に壊れる前に来てくれて。
ありがとう。
「ありがとう、“カオル”―――・・・・・・」
あの人の顔が見れただけで、今は充分だよ。
これでやっと、安心して眠れる・・・・・・
+ + +
「・・・・・・何で・・・お前は・・・うちはイタチは・・・」
「勘違いしないで下さい、カカシさん」
「!?」
スッ と。
“うちはイタチ”を模した膜が消えた。
現れたのは・・・カオル=クルビュート。
「カ・・・カオルさん!? どういうことなんですか!!?」
「・・・・・・こうするしかなかった」
「は・・・?」
「こうするしかなかった・・・本物はまだ、来ない」
「本物って・・・」
「うちはイタチは、ナルト君が唯一愛した人だから」
「!!」
静かに、腕に抱いた子供の髪を撫でた。
うちはイタチはまだ来られない。だから―――・・・
「こんなこと、本当はしたくはなかったけれど」
今は偽者でもいい、“イタチ”が必要だったから。
「こんな風に無防備に眠るナルト君は・・・初めて見た」
安らかな寝顔。
「何なんだ・・・アンタいったい何者なんだ!? 何を知っている!??」
「静かにしてください・・・起きてしまいます。きっと何年かぶりの熟睡なのでしょうから」
「は・・・!?」
煉が勝手にナルトから抜け出せば、彼は強制的な眠りに入る。
だがそれはあくまで“強制的”なもの。
「―――貴方は、何も知らない」
そう、何も知らない。何も。
「愛していると、そう囁きながらも何も知らなかった。この子の仮面にすら気付かなかった」
「仮面・・・・・・?」
「ドベでバカなだけの子供が・・・あの環境で生きてこれたと思いますか」
「・・・・・・・・・」
「単純で一途なだけの子供が・・・里人の憎しみに耐えられたと思いますか!」
「それは・・・・・・」
徐々に大きくなっていく声を、カオルは自覚していた。
ジェイク以外の人間は全く意に介していなかったのに。
「この子は貴方が思っているより繊細で複雑です。・・・貴方の憎しみにも気付いていた」
「!!」
「やはり貴方は・・・ナルト君には相応しくない」
さようなら、カカシさん。
そう言い残し、カオルはその場を後にした。
+ + + +
「だんだん計画からズレてきたな・・・カオル?」
「そうね・・・何より三代目の死が最大のイレギュラーだった」
「これからどうするつもりだ?」
「・・・・・・ねぇ、煉」
スゥッ と。
眠る子供に向けられていたカオルの目が、細められた。
その様子に煉はらしくもなく、寒気を覚える。
「優れた策士というものは、いくつもの計画を用意しておくものなのよ」
「・・・カオル?」
「予想外のことがおこれば、ソレにあわせてまた新しい計画をたてるの」
「・・・・・・・・・まさかお前」
今度は寒気でなく、軽い興奮が走る。
これだからこの女を見ていて飽きることはないのだ。
「・・・でも結局はナルト君次第。この子は誰より幸せになる権利がある」
「―――・・・そうだな」
+ + + +
「行ってくるよ―――カオル、煉」
「行ってきなさい・・・・・・逝く覚悟でね」
「・・・ま、死なぬ程度に頑張るがいい。俺のチャクラが使えんのだからな」
そう言って、二人は代わる代わる彼の頬に口付ける。
「ああ―――二人とも、ありがとう」
そう言って去った子供の顔は、随分と清々しく見えた。
BACK TOP NEXT
------------------------------------------------------------
「羽根」は解放の象徴。 白く、高く。
------------------------------------------------------------