ザシュッ!

最後の敵をクナイが切り裂き、死を与える。

死神。

今の彼にはこれほどぴったりな言葉は無いだろう。
美しき金色の死神。
ゾクリと、背に快感が走る。

―――殺してみたい。

半ば本気でそう思う自分はとうに狂っているのだろう。
もとより、殺人兵器として造られた自分を正常だと思ったことなど無かったが。

目の前の死神は自分が刈られるとき、どのような顔をするのだろう。
おそらく恐怖に顔を歪ませるといったことはしないだろう。
むしろ歓喜するのかもしれない。
絶望を、真の恐怖を知っている彼は。

(ああ、殺してみたい・・・・・・壊れていくのを見ていたい)

異世界へ来たことに大いに満足しつつ、カオル=クルビュートは妖艶に笑った。


+  +  +  +


(―――カオルか・・・何故こんな所にいるんだ?)

今夜は抜け忍抹殺の単独任務だった。
ランクはSだったが、蓮―――ナルトにとってはさして難しいわけでもない。

(何故出てこない・・・傍観しているつもりか?)
《そのようだな・・・目的はわからんが》

滅多に口を出さない昔からの居候・煉が相槌をうつ。
世にも奇妙な居候・カオルと同居し始めて1週間が経った。
その間彼女からアチラの世界の事を聞いたり、魔術の事を聞いたりした。
夜の任務もあったのだが、見に来たことは初めてだ。

(いや・・・前にも来てたのかもな、気づかなかっただけで。単独任務だから気配を露にしたのか)

カオルが本気で気配を消したら、きっと気づくことは出来ないだろう。
それほどに彼女は強い。
忍術を駆使してかろうじで抵抗できるかどうか、と言ったところだ。
―――彼女が魔術を使わなければ、の話だが。
魔術の中には相手に全く気取られずに殺す方法もあるらしい。
それは禁術(忍術と同じだ)と呼ばれ、膨大な魔力と集中力を要するようだ。
カオルは何ともないように言っていたが、それくらいわかる。

(一度手合わせしてみたいものだな・・・・・・)

ザシュッ!

最後の敵をクナイが切り裂き、死を与えた。


+  +  +  +


「出てこいよ、カオル。もう終わったぜ」
「・・・・・・ナル・・・いえ、蓮」
「何のつもりだ? まさか手伝いにきたわけじゃないだろう」

スッと、薄かった存在感が顕著になる。
背後の闇に血色の女のシルエットが浮かび上がる。
同じ服を何着も持っているらしく、相変わらず悪趣味な黒ずくめだ。
暗部装束を身につけた今の自分が言えることではないが。

「“ソレ”の使い心地はどうかと思って」
「ああ・・・せっかく貰っといてアレだが、暗殺には使えないな。
 “コレ”は音がうるさすぎる・・・・・・威力・スピードは絶大だけど」

言いながら取り出したのは銀色の金属の塊―――拳銃だ。
カオルの持っていた巨大なバッグには着替えや生活必需品ばかりではなく、
拳銃も含め見たことも無い武器が大量に入っていた。
出会った時の小競り合いで興味を持ち、少しお願いしたら簡単にくれた。

「そうでしょうね」

クツクツと、女は笑う。
いつもとは違う異様な雰囲気に、少し身構えた。

「ああ、そんなに緊張しなくても大丈夫よナルト君。
 アナタが殺してるところを見てたら、少し興奮しちゃっただけだから―――」
「悪趣味だな。人殺しが楽しいクチか?」

胡乱気な視線とどこか楽しげな視線が交差する。
昔は自分もそうだった―――殺すことに存在意義を見出していた。
が、今は違う。抵抗も無いが楽しいわけでもない。
三代目のことは割と好きだし、目の前の女という暇つぶしも出来た。

「まさか! 殺しが楽しいなんて思ってないわよ。嫌だとも思わないけど。
 ただ今のアナタがあんまり綺麗だから・・・・・・。
 自分の容姿と雰囲気がどれだけ人を惹きつけるか、わかってる?」
「さーな。興味ないし」
「それは残念ね・・・・・・いい武器になるのに。今度教育してあげるv」
「結構だ。・・・っつーかアンタの方がそうだろ。
 前から思ってたんだが―――朝、良い匂いがするのは何故だ?」

しまった、とでも言うようにカオルが硬直する。
だがそれも一瞬で、苦笑しつつも理由を話し始める。

「アレはね、“香り”よ。人間誰でも持ってる―――要するにフェロモン?」
「ふぇろもん〜?」
「そう。コッチじゃ知られていないようだけれど。
 アナタや私は人一倍その“香り”が強いから、人を惹きつけてしまうの。
 私は普段意識して抑えているけど・・・・・・朝はついうっかり、ね」
「なんじゃそら・・・・・・」
「アナタの場合、殺してる時が一番香りが強くなるみたい」

カオルが来てからというものの、毎日が混乱しっぱなしだった。
最近やっと慣れてきたのに、またしても頭痛の種ができる。

(香り?フェロモン? 蓮の姿だと妙に言寄ってくる奴が多いのはそのせいか?)

「―――わぁった。んで?ココへ来た本当の理由は?」
「・・・・・・・・・誤魔化せなかった?」
「当然」
「―――お願いがあるのよ」
「お願い?なんだよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・私を下忍の任務へ連れて行ってくれない?」
「はぁ?何故だ?」

もっと大きなものを要求されると思っていた。
下忍の任務などに行って、カオルに何のメリットがあるのだろう。

「仮面のアナタを見てみたいからv」
「理解できねぇよ」
「だって興味あるじゃない?
 里一番の狸に育てられた里最強の狐なんて。
 普段どのように周りを化かしているのかぜひ知りたいわね」
「・・・・・・・・・・・・いいだろう」

と、溜息一つ。
拳銃をくれた礼にでもなれば幸いだ。

「ジジィに言っとくよ。表に出るなら俺に対する立場を決定しないとな」
「ありがとう」

“香り”全開の笑顔をくらい、思わずうめき声をあげるナルトであった。


+  +  +  +


(さて、新しいオモチャも見つけたし・・・・・・あとはどう遊ぶか、ね)

実に面白い人材を見つけたと思う。
容姿・実力・スレた性格、全て申し分ない。

(問題はアチラの世界へ帰れるかどうかね・・・。
 ジェイクの血管が切れる前に戻らないと大変だもの)

何より仕事が片付かない。
暗殺の依頼を千件、全て終えなければ自由になれないのだから。

カオルはそっと、微笑みながら自分の心臓の上に手を当てた。
埋め込まれた爆破装置が外される夢を抱きながら。


BACK TOP NEXT


------------------------------------------------------------
あああああ・・・・・・反応が怖い第4章。(汗)
言っときますが、カオルはナルトに対して全く敵意はありません。
純粋に彼を可愛いと思い、からかいたいと思っているだけです。
いや・・・それが問題なのかもしれませんが・・・・・・。( ̄▽ ̄;)
それにしてもこの背景はマズかったか。要するに死体ですが。
------------------------------------------------------------